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最高裁判所大法廷 昭和24年(新れ)279号 判決

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人小林武夫の上告趣意について。

本件行為の食糧管理法九条は「政府ハ特ニ必要アリト認ムルトキハ政令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ配給、加工、製造、譲渡其ノ他ノ処分、使用、消費、保管及移動ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得」と規定している。従って本条は主要食糧に関する移動等に関して、政令で必要な枠を定めることをこれに委任し、同時にこの枠の範囲内において必要な規定を定めることを命令(政令以外の命令)に委任する趣旨を有するものである。即ち、法律が直接に命令に委任したものであって、ただその命令によって定め得る事項の枠だけを政令に定めしめているに過ぎないのである。本件の場合に於いて食糧管理法九条から枠を定める委任を受けた政令(食糧管理法施行令一一条)は、移動の制限という具体的な一定の枠を定め、命令(農林省令、食糧管理法施行規則二九条)は、この枠の範囲内において法律の委任に従って移動に関する制限規定を設けたものである。それ故、所論のように、法律から委任を受けた政令が、自らその委任事務を尽さずしてこれをそのまま勝手に命令に委任したという関係にあるのではない。従って、食糧管理法施行令一一条及び同法施行規則二九条の違憲無効を主張する論旨は、理由なきものと言わねばならぬ。

被告人杉岡栄三郎の上告趣意について。

右は、結局原判決の事実誤認を主張するに帰するものと解せられる。従って刑訴四〇五条所定の適法な上告理由に当らないから、これを採り上げることはできない。

尚、本件につき、刑訴四一一条を適用すべき事由あるものとは認められない。

よって、刑訴四〇八条同一八一条により、主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 霜山精一 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 穂積重遠)

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